ロータリークラブ(国際ロータリー第2760地区 ROTARY International District 2760)

国際協議会でのRI会長の挨拶

K.R.ラビンドラン 2016-17年度国際ロータリー会長

K.R.ラビンドラン夫妻

2016‐17年度地区ガバナーをはじめとする朋友ロータリアンの皆さん。

本国際協議会へようこそお越しくださいました。

古代ギリシャのある哲学者がこう書き残しています。「偉大な事業は小さな機会から始まるものである」なるほどと思える言葉かもしれませんが、真実はそうではないと私は思います。

私は、偉大な事業は小さな機会から始まるのではなく、大きな機会から始まると思います。ただ、大きな機会は時として小さく見えるというだけです。

私たちには皆、大きな機会が与えられました。ただしそれは、地区ガバナーを務める機会でも、私のように国際ロータリー会長を務める機会でもありません。私の言う大きな機会とは、皆さんがここにいたったきっかけのことです。

その機会は、ガバナー指名を知らせる電話から始まったものではありません。それよりもずっと前、あるロータリアンから「私のロータリークラブの例会に来ませんか」と誘われたときに始まったものです。

そのときはさほど大きな機会とは思わなかったかもしれません。しかし、理由はともあれ、例会に出席させてもらうのも悪くはないと誰もが感じたのではないでしょうか。素晴らしい人たちと出会い、人のために役立つことをし、しかも楽しそうだ、と。

今振り返れば、それは決して小さな機会ではなく、ロータリーを通じて社会に貢献する大きな機会であったことが分かると思います。その機会をつかんだことで、ロータリーという偉大な事業に参加できるようになったわけです。

ですから、本日に限らず、明日、そして来年度に向けて認識すべきなのは、小さいと思える機会も、それを生かすことで大きな機会にできるということです。

私たちが今週サンディエゴに来たのは、機会を与えられたからです。それはクラブがより良く、より効果的で、より野心的な奉仕活動に取り組めるようにする機会です。

この機会をどう生かすかは、私たち一人ひとりにかかっています。ただし、私たちが下す決断の影響を受けるのは私たち自身だけではありません。

その影響は、決して顔を合わせることがなくとも、ロータリーのおかげで人生が変わる世界中の人びとにも及びます。

今まさに世界のあちこちで、水汲みのために頭に容器を載せ、徒歩で一時間もかかる汚染された川に行 き、水を運ばなければならない女性たちがいます。でも来年度、ロータリーが井戸を掘れば、その必要はなくなります。

インドには、学校にトイレがないために、12~13歳になると学校に行けなくなる少女たちがいます。でもロータリーがトイレを設置すれば、授業を受け続けられるのです。

パキスタンとアフガニスタンでは毎日、ポリオ感染による身体麻痺の危険に脅かされながら生活している子どもがいます。でも来年度、予防接種を行き渡らせれば、子どもたちを恐れから解放し、近い将来に世界からポリオをなくすことができます。

しかしそのためには、ガバナーとなる皆さんだけでなく、クラブ会長やすべての会員に、ロータリーへの入会がいかに大きな機会があったかを認識してもらわなければなりません。その機会は、人類のためのロータリー奉仕を通じて、より良い世界を築く機会です。

ロータリーは今、岐路に立っています。来年度は、世界で最後のポリオ症例が報告される年となるかもしれません。そうなれば、ロータリーの歴史において最も重要な年となります。

ポリオ撲滅の実現まで本当にあと少しです。目標達成にこれほど近づいたことはありません。南アジア全域、アフリカ全域がすでにポリオフリーとなっています。野生型ウイルスの温床となっている最後の地域は、アフガニスタンとパキスタンにまたがっており、ポリオ常在国はこれら2ヵ国を残すのみとなっています。両国はロータリーのあらゆる支援を活用して、今年がポリオ発症の最後の年となるよう、全力を尽くしています。

ロータリーは30年以上、ポリオと闘い続け、一度もあきらめたことはありません。その間に、25億人の子どもが予防接種を受けました。私たちは必ずや、ポリオ撲滅を成し遂げます。

また、いずれ撲滅が実現した時について、今から考え、準備しておく必要があります。ポリオ撲滅におけるロータリーの貢献を十分認識してもらうにはどうしたらいいか。この成功を、その後数十年にわたって、他団体との協力、会員増強、より野心的な奉仕活動にどうつなげていくか、ということです。

ポリオのない世界の実現においてロータリーが果たした役割をすべての人びとに知ってもらうこと、これが極めて重要です。なぜなら、ロータリーの功績を知る人が増えれば、パートナー団体、資金、そしてなによりも、さらに多くの達成を担っていく会員が増えるからです。

ロータリーがしかるべき評価を受けるために、私たちは全力を尽くしています。しかし、エバンストンの世界本部で何もかもできるわけではありません。ロータリーとは何か、何に取り組んでいるのかを、クラブを通じて地域社会に情報を広げていただく必要があります。

ですから、ポリオ撲滅が成し遂げられた時に、その機会を生かす用意がクラブにできていなければなりません。社会貢献をしたい人たちが、ロータリー入会こそが世界を変える方法だと考えるようにすること。そのためには、クラブにその機会を提供する用意がなければならないのです。

新会員を入会させるだけでなく、ロータリー奉仕に積極的に参加できるクラブ。新会員を温かく迎え入れ、活気があり、「四つのテスト」を真に実践するクラブ。このようなクラブが必要です。ポール・ハリスが111年前にロータリーを創設した目的、すなわち、「価値観を分かち合える人を見つける」ということは、今日も人びとがロータリーに入会する理由となっています。誠実さ、多様性、寛容、友情、平和を信じ、人生の最大の目的は人類のために奉仕することだと信じている人びとと出会うことです。

ロータリーは変革を遂げ、時代の変化に対応し、前進しています。しかし、その活動が子どもに本を読んで聞かせることであっても、血液バンクを設立することであっても、仮設の歯科クリニックを設けることであっても、ロータリアンをロータリアンたらしめる真髄が変わることはありません。

多様性を強みとするロータリーは、今も職業分類を基本としています。高い倫理基準は時代を超えた価値観であると信じる私たちは、今も「四つのテスト」を壁に掲げています。そして何よりも、ポール・ハリスが信じたのと同じように、人生の最大の目的は人類に奉仕することだと信じています。

このような理由から、2016‐17年度のロータリーのテーマはシンプルに「人類に奉仕するロータリー」 といたしました。

朋友の皆さん、ロータリーはすでに驚くほどの功績を成し遂げました。妻ジュディーと私も本年度その多くを目にしました。しかし、ロータリーはもっと成し遂げることができると私は考えます。

ロータリーがさらに前進するには、意欲と思いやりと知恵にあふれた人たちがもっと必要です。さらに、若い人たち、退職後間もない人たち、現役で仕事している人たちが皆、ロータリーに入会して活動したいと感じるような、柔軟性のあるクラブが必要です。新たなパートナーシップを模索し、ほかの団体との協力関係を切り開き、協力を通じてもっと多くを達成すべきです。リーダーシップの継続性もさらに重視する必要もあります。これは、ポリオ撲滅活動から学んだように、最大限の成果を得るには、皆が共通の方向に進む必要があるからです。人類に奉仕しなければなりません。

これは、私たち全員にあてはまることです。私たちは一つのチームであり、一人の達成はチーム全体の達成でもあります。しかも、達成そのものだけでなく、達成に向けて助け合うことも大切です。なぜならロータリーのリーダーシップは、奉仕活動と同様、協力が基本となるからです。

これまで、地区ガバナーは「ファーストクラス」、「ベストクラス」、「ワールドクラス」などと呼ばれてきましたが、来年度は、ロータリアン全員を一つのチームとして、「ロータリーチーム」と呼びたいと思います。このチームは、より良い世界という共通の目標に向けて、共に活動し、共に奉仕し、共にがんばる、120万人のロータリアンのチームです。

それがロータリーのあるべき姿です。ただし、今日ここにいらっしゃる皆さんは、その中でも特別な方々です。ロータリーチームのレギュラーメンバーではなく、選ばれた最高のメンバーであり、「ロータリーオールスター」と呼んでもいいでしょう。

助けを最も必要とす人びとの人生を変えるような活動をしているロータリアンのリーダーとして選び抜かれた皆さんを、ロータリーは必要としています。

ロータリアンが井戸を掘り、学校を建て、ポリオを撲滅するのを、世界中の人びとが待っています。

ロータリアンにとっては、毎日が人びとの人生を変える機会です。それが小さな機会に思えることもあるかもしれませんし、自分には大したことはできないと思うかも知れません。

しかしそれらの機会は、決して小さなものではありません。皆さんが手を差し伸べる人たち、愛する人たちにとって、そして、今の世代だけでなく、これから何世代にわたり、皆さんが行うことが違いを生んでいきます。今よいことをすれば、後世により良い世界を遺すことができるのです。

よいことを、毎日一つずつ行う。それだけで違いが生まれます。

それが、私たちがロータリーにいる理由であり、まさにロータリー奉仕です。そして来年度、ロータリー奉仕が効果的に行われるかどうかは、皆さまの肩にかかっています。

ロータリーが最善を尽くして人類に奉仕し、できる限り多くの人びとの人生をより良くできるようにすることが、皆さんの役割です。

今も、重い水容器を頭に載せて運ばなければならない母親たち、学校教育をあきらめなければならない少女たち、ポリオにおびえながら生きている子どもた ちにとって、来年度は世界がより良いところとなるように。「人類に奉仕するロータリー」がこれを実現で きるようにすることが、皆さんの役割です。

皆さん一人ひとりがロータリーという大きな機会を見 い出し、この機会をつかんだからこそ、実現できることなのです。

ご清聴ありがとうございました。