ROTARY INTERNATIONAL DISTRICT 2760 国際ロータリー第2760地区
ガバナー月信
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 ガバナー月信 No.1 7月 識字率向上月間
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■識字率向上について

識字率向上グループ 第3ゾーン・コーディネーター
加納 泉

 RIでは1997年より識字率向上を奉仕活動のプロジェクトに取り上げて来たがビチャイ・ラタクル会長、ジョナサンB.マジィアベ会長、グレンE.エステス会長、の3代の会長に続き、2005年〜06年度カール・ヴィルヘルム・ステンハマー会長も識字率向上を奉仕活動の第一強調事項として提唱している。
 時を同じくして国連では2003〜2012年を識字国際十年(United Nations International Literacy Decade)と定め、ユネスコを中心に識字運動を展開している。識字の問題は、ポリオ・プラスの後にくる最重要課題と考えられている。
 しかし残念ながら日本では識字率向上がロータリアンの強い関心を惹くには至っていないのが実情である。それは徳川時代からの寺子屋の普及によって江戸では町人でも男は50%という高い識字率を示し、明治政府の国民義務教育により、日本は殆ど100%の識字率を維持してきたので、識字率向上の問題は今更取り上げる必要もない既成事実と考えられ社会的関心を持つ意味がなかったのである。

識字率向上はなぜ必要か?
 字を知らないこと、すなわち非識字(文盲)と貧困は悪循環を繰り返すが、世界の識字状況は1992年のユネスコの発表によると1990年の世界の成人(15歳以上)の25%、即ち4人に1人が非識字者であってその3分の2は女性であり、また途上国では6歳から11歳のいわゆる就学年齢児の20%以上が未登校であり、将来の非識字者の予備軍であった。
 10年後の2000年には成人の非識字者の割合は「4人に1人」から「5人に1人」に減ったが、途上国の人口が増えているので非識字者の絶対数は変わらず、2000年現在地球上に8億8,000万人の非識字者がいると国連は発表している。その3分の2が相変らず女性である。未就学の子供が1億1,000万人もいて、やはりその3分の2が少女である。現代世界の緊急課題である人口問題をはじめ、多くの問題が少女の教育にかかっているといわれている。
 また先進国ではITに乗り遅れる人は時代から取り残されるとまでいわれるこの情報化時代に、文字さえ知らないということは何を意味するのでしょうか。
 非識字者は職業に就けず、貧困を生み、貧困は子供の教育の機会を奪って、非識字と貧困は悲惨な悪循環を繰り返し、益々、南北の経済的文化的格差を増大する結果となる。
 識字プログラムの目標はこの現状を放置しては、我々は平穏な世界を次の世代に残すことは到底出来ない。南北格差を緩和し、世界の社会的不安を取り除くことが急務であるとする。またその根底にあるものとして人口問題があげられる。現在地球上では年間8,000万人弱即ち日本の人口の60%を超える人口が毎年増え続けている。このままでは資源に限りある地球の未来は暗い。この人口問題解決の最大の決め手も若い女性の教育であるといわれる。中等教育を受けていない途上国の女性は、平均7人位の子供を生む。
 しかし、途上国でも中等教育が95%普及している地域では先進国並みに子供の数は2人以下になる。この事実から、少女の教育こそ途上国の人口爆発に対する最も有効な手段であると考えられている。一方識字教育は人口問題とは別の非常に重要な今日的意味を持っている。それは環境問題である。我々は「次の世代」に対して、住みやすく、持続可能な環境を残さねばならないが、非識字の人たちは、現在世界が直面する問題について、極めて無関心であるといわれ、彼らには環境問題を考える教育が必要であるが、識字の壁がそれを妨げている。
 環境対策は、経済原則と相容れない面があり、それを推進するには、世論の盛り上りがぜひ必要で、そうした国民の意識改革には、識字が最大の武器であると言われている。ポリオ・プラス計画を阻む最も大きな障害も識字の壁である。一旦沈静に向かったインドのポリオの発生は、再び上昇し、患者発生は1,000人を超えている。
 特にウッタル・プラデッシュという北部の州の患者が82%を占めているが、その地の識字率をみると25.3%であり、インドでも識字率の一番低い所である。

 さて、ポリオ根絶に関しては、それまでWHO、ユニセフなどの国際組織や各政府が効果を挙げられなかった地域で、ロータリーのポリオ・プラス活動が目覚しい効果を挙げたため、国際組織から頼りにされて協力を要請されてきました。その成功の秘訣はロータリークラブが世界166ヵ国に広く万遍なく存在し、その地の会員が個人的に遠い現地の子供たちにワクチンを運び、飲ませた事に依るものが大であります。このロータリーの献身的な功績については国連をはじめ国際組織・各国政府も高く評価しています。
 識字率向上についても国連・ユネスコ及び民間機関が提唱した学校建設・教師の養成・文房具の提供等々の努力にもかかわらず、その成功は仲々困難であり逆に東南アジア地区では人口増加のため非識字者の数は増えると予想されています。
 そのためユネスコ・世界銀行・ユニセフ・国際読書協会などの国際組織や、各国政府からロータリーがパイロット的開発の役割を果たすことが期待されています。

 ではRIの推す識字率向上のためのパイロット的役割を果たす灯台作戦とはいかなるものですか。
 灯台作戦・ライトハウスプロジェクトとはCLE法という識字教育手法を用いて、2年程度の比較的低額なパイロット・プロジェクトを個々のクラブが実施できる適当な広さの地域で組み、クラブ単位で実行可能な5,000ドル〜40,000ドルぐらいの規模で開始するプロジェクトです。
 その基本になっているのが、CLE(Concentrated Language Encounter)集中語学講座です。オーストラリアのクインズランド大学の教授で、PGでもあるリチャード・ウォーカー博士たちが開発したもので、博士たちはこのCLEの教育方法によって先住民アボリジニーを対象に教育を行い、その99%は既に非識字の状態を脱したといわれています。
 識字運動は従来から立派な運動もありますがロータリーが正式にDDFの配分によるマッチング・グランド・プロジェクトとしてお願いする識字プロジェクトはCLEを基本にしたものが強く推奨されております。
 このCLEは従来の方法に比べて非常に有効である事が証明されています。1987年にタイのロータリアンであるソクラック・ラタナビッチ博士が識字率の低いタイの僻地にCLEを導入しました。その結果、これまで成果を挙げることの出来なかったタイの僻地で大成功を収めたため、1992年からタイ文部省は初等教育の標準の教育法としてこのCLEを採用し、タイ国全土に広げていきました。
 識字はその国の固有の文化の問題でありますから、外国からの人的援助は無理で、その現地においてCLEに熟達した教師を作ることが、援助国の出来る一番大切な仕事になります。
タイの最初のプロジェクトでは3H計画を利用して約50万ドルで始めました。我々は先ずロータリーのパイロット・プロジェクトとして開始し、2年ないし5年間の間にこのパイロット・プロジェクトが成功したら国や国際組織にこれを継承してもらうことを目標にしています。その後は、国家的規模で現地の人たちがその輪を広げるという発想です。
 ロータリーの奉仕本来の姿であると思います。現実にこの計画を実施している国はタイ・バングラディッシュ・ネパール等で初等教育としてCLEを採用しています。
 識字率の低い成人女性のためのプロジェクトとしては、エジプト・トルコ・インド・ブラジル等で実施されています。ロータリーの行う、ライトハウスプロジェクトには、色々な細かい戦略が立てられています。あなたの地域・クラブの識字率向上プロジェクトを確実に成功させるためには先ず相手地域の識字のゾーン・コーディネーター或はガバナーと誓約を取り交し、現地の実情を把握し、財団のDDFを使用し、WCSのプログラムとしてマッチング・グランドを組み、長期的プログラムとしてその成功を見極める事が一番かと存じます。
 識字率向上こそが南北間の格差を解消し急増する地球の人口を減少させ環境汚染を防止する最も大切な課題と考えています。