ガバナーメッセージ
国際ロータリー第2760地区 ガバナー 大島 宏彦
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職業整理

 「職業奉仕をロータリー活動の原点として確認する」を地区目標の第2に取り上げた身としては気が引けますが、ガバナー就任を口実に肩書き整理に本腰を入れ始めました。昨年6月に中日新聞会長をやめたのを皮切りに、今年は共同通信理事会長や新聞協会理事運営委員を手放しました。ロータリーの実務が始まる7月からは、これまでより少しは時間が空く計算です。
 そうはいっても相手のあること、なかなか思い通りには進みません。名古屋商工会議所副会頭や全日本広告連盟副会長などは残っていますし、いつの間にかふえた中学校・高校・大学の同窓会の肩書きも従来のままです。「世の中には心ならずも、長年勤めた職を離れなければならない人が一杯いるのに」と思いながら、少しでも時間を作ろうと悪戦苦闘を続けています。
 どんな小さな団体でも、引き受けた以上は手を抜けません。しかし同時に二つの仕事を手掛けることが出来ない以上「多くの家族の生活に責任を持つ自己の職業が最優先」というのが、時間管理の原則でなければなりません。先進国のロータリーで会員が減り始めたせいでしょうが、アナハイムの研修で職業奉仕の重要さが取り上げられた時は、わが意を得た思いでした。
 そうは言っても、辞めるには就任する以上に神経を使います。リーダー次第で多くの社員・役員の生活が一変するからです。学歴も経験も申し分ない息子の副社長が、業界最優良だった会社を相続した途端に大赤字、営業譲渡しなければならなかった例を、五十年前に見ています。ですから長年勤めた社業に良き後継者を得て、地域奉仕に力を割けるのは幸せと思います。
 「最後の一度くらいは」と、今年の6月は日程の折り合う限り、色々な会合に付き合いました。「20年前から出ている会だし、アナハイムのロータリー研修と同程度」と一週間の休暇をとり、WAN世界新聞大会にトルコへも出掛けました。ギリシャのオリンピックの直前で参加者不足で困っていた日本新聞協会は喜んでくれましたが、実際は顔を見せているだけです。
 日ごろ「自分しかできない仕事をやってこそ勤務時間だ。他人と一緒の会議やセレモニーなど、それに必要な往復の時間ともども、勤務時間に参入すべきでない」を信条の一つにしている以上、この間の生産性は0に近かったと言えます。数年前のWANの時は、ユーロ発足前の財務大臣にインタービューして為替を動かす発言を引き出しましたが、これも今は昔話です。
 平社員時代に読んだ「パーキンソンの法則」に「恩給点の解析」という、上司の辞めさせ方の秘伝があります。「飛行機旅行と書式の書き込みを組み合わせれば、近代生活における完全な疲労をもたらし、短期間に退職を考え始める」という話です。海外まで同行してくれた協会の若者に荷物運びを手伝ってもらいながら「原理原則は変わらない」と、つい苦笑しました。
 それでも一週間も留守にすると、帰ったあとが大変でした。翌朝から各種各様の年次総会や理事会が大小合わせて週10回以上目白押しです。それが一か月近くも続きました。イズミール・イスタンブール・フランクフルト・成田・小牧の乗り継ぎが順調でなかったら、もっと混乱したでしょう。ロータリーにも迷惑をかけたようです。これからは少しは減る筈ですが…。