【講演】里山と共生するゴルフ場を目指して-環境破壊の元凶から保護のナイトへ-
(名古屋大須ロータリークラブ)

20121108_nagoyaosu_1.JPG名古屋大学名誉教授 愛知県森林公園ゴルフ場取締役 松本哲男様

これまで自然を破壊する元凶とまで言われていたゴルフ場が、気がつけば周りは住宅だらけで、結局は緑の保護区になっているという現実がある。それならゴルフ場をもっと自然を保護する観点から積極的に利用してはどうかという考えで取り組み始めたのが、森林公園ゴルフ場における里山との共生の取り組みである。
里山はご存じのように人間が常に手を入れていかなければ、究極的には森に遷移してしまう。「里山を守る」とは、自然と調和を保ちながら人が生活することである。
里山の崩壊で絶滅の危機にある動植物を同様な自然環境にあるゴルフ場を利用して保護し、市民に開放して半自然の里山環境の疑似体験をしてもらうことで、里山保全の意義を理解していただく。自然との共生の重要性を学ぶ場を提供するのが、21世紀のゴルフ場の使命の一つと考え取り組んでいる。
森林公園ゴルフ場は県立森林公園の中に1955年12月、全国で2番目のパブリックゴルフ場として新設された。1991年、バブル経済の崩壊とともにゴルフ場の経営が全国的に厳しくなる中で、当ゴルフ場も例外ではなかった。
プレー代が下がり、パブリック料金の比較優位性が失われる一方、管理が次第に不十分になり、キャディサービスへの不満も募り、利用者が急激に減少した。2003年10月、愛知県は県営森林公園ゴルフ場をPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で再整備・運営することを発表した。県にとって最初のPFI事業で、20年後県に無条件譲渡、パブリック維持、従業員の一部引き継ぎなどを条件に翌年4月民間事業者を募集した。5社が応募し、同年11月、「里山との共生」をキーワードに「20年間の安定経営」、「資産価値の最大化」、「県と県民に対する還元」を掲げた現経営母体であるウッドフレンズグループが受託した。
県の事業者選定委員会による審査では、他社の提案書も非常に高い評価を受けたが、ウッドフレンズの「里山共生」の一文が決定的になったと伺った。新事業方式で、2007年4月、森林公園ゴルフ場は再オープンした。オープン直後に発行されたゴルフダイジェスト社の雑誌Choice 5月号に早くも日本のベスト100コースに選ばれ、パーゴルフの2008年度ベストコースランキングで31位、営業努力部門1位になった。利用者も目標の初年度入場者数8万5千人を大幅に上回り10万人になった。以後、順調に推移している。
諮問委員会を設け、運営の透明性の確保と利用者からの改善要求などを反映させている。ゴルフ場は2008年8月、環境マネジメントの国際規格「ISO14001」を取得した。
20121108_nagoyaosu_2.JPG2007年から場内の本格的植生と動物の生態環境調査を行い、ゴルフ場利用者の親子を対象に「ゴルフ場内でできる里山つくり」への参加を呼びかけ始めた。2009年4月「里山つくり」の3つの取り組みを開始した。
1.ゴルフ場内外の野生動植物を保全、繁殖させ、彼らと共生するゴルフ場を利用した大都市近郊の里山つくりとその環境保全。
2.場内を市民に開放し、豊かな里山環境を体験することにより、里山保全の意義を理解していただく、里山活動。
3.地産地消を目指す里山市場の開設。
現在、場内には国・県指定絶滅危惧植物のシデコブシ、ウンヌケ、サクラバハンノキ、シマジタムラソウ、シラタマホシクサ、ヘビノカズラ、マメナシ、ミカワシオガマ、モンゴリナラ、絶滅危惧動物のムササビ、カヤネズミ、貴重植物のクロミノニシキゴリ、ササユリ、トウカイモウセンゴケが自生・生息している。最近ホタルの繁殖も見られるようになった。これまでにニホンリスのえさになる抵抗性アカマツを200本5年間植樹した。もうひとつの主要なエサであるオニグルミの実植えも行い、ムササビ用の巣箱を40個作成した。里山活動では県民がコース内の豊かな自然環境と親しむ機会を提供するために、毎月定休日にゴルフ場を開放し、自然観察の場として各種イベントを組み、夏休みには児童対象に自由研究のキャンプを催している。里山市場を第2、4の土日に開始し、環境に配慮し、愛着をもって商品をつくっている地域の生産者が、安全・安心でおいしい野菜やくだもの、農産加工品を販売している。
20121108_nagoyaosu_3.JPGここに述べたようなことが順調に行われても、目指す「里山」の形が見えるには20年はかかるであろう。抵抗性アカマツやオニグルミの実を植えた子供たちが大人になり、自分の娘や息子たちに、成長した木を見せに来ることを想像するのは愉快なことである。春にはカタクリの花が咲き、ギフチョウが舞い、夏にはキャンプを張り、親子でホタルを楽しみ、ムササビの滑空を観察することができるゴルフ場が全国にできれば、ゴルフ場は市民に親しい憩いの場にもなり、その地位は飛躍的に上がり、アメリカとはまた一味違う住民の集まる場になるであろう。

LinkIcon詳しくは、名古屋大須ロータリークラブまで