【講演】インフルエンザを理解する8つの質問(名古屋千種ロータリークラブ)

20120911_chikusa_1.JPG千種保健所 所長 鈴木幹三様

今年もインフルエンザの流行時期に備えて、インフルエンザを理解するための8つの質問と題した講演をいたします。

1.インフルエンザウイルスは寒くて乾燥したところが好きだ。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Yesです。
インフルエンザの流行は、インフルエンザウイルスによって起こり、Harperによる「湿度とインフルエンザウイルスの生存」実験により、インフルエンザウイルスは低温、低湿度の環境下では、高温、高湿度の場合に比べて長時間活性を維持しうることが観察されています。

2.インフルエンザは1~2月頃に流行のピークがくる。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Yesです。
インフルエンザは寒い季節に流行します。わが国では11~12月にそのシーズンの流行が始まり、年によってその規模は異なるものの、翌年1~2月にピークを迎え、3~4月には終息します。

3.インフルエンザによる死亡の90%は高齢者である。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Yesです。
インフルエンザでみられる合併症のうちで、頻度および重症度からもっとも重要なものは肺炎です。高齢者のインフルエンザ罹患率はむしろ低いといわれていますが、いったん罹患すると経過が遷延し、肺炎を合併しやすい傾向があります。最近の流行では、インフルエンザの死亡のおよそ90%は65歳以上の高齢者で占められています。

4.インフルエンザの予防法で有効なものは?
インフルエンザの主たる感染経路は、飛沫感染であり、接触感染もあり得ると考えられています。インフルエンザを予防するためには、人混みや繁華街への外出を控え、外出後の手洗いは有効と考えられています。一方、うがい、マスク着用の有効性については、明らかな根拠は示されていません。

5.インフルエンザはA型、B型、C型があり、ワクチンにはA型、B型の中の3株が含まれている。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Yesです。
ヒトのインフルエンザウイルスにはA、BおよびCの3つの型があり、このうちA型とB型はしばしば大きな流行を繰り返しています。C型インフルエンザは一般に軽い上気道炎を呈すものであり、身近な周辺で感染が維持されていると考えられています。最近のインフルエンザワクチンにはA型2株とB型1株が含まれています。

6.インフルエンザワクチンの接種は「かぜ」にも有効である。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Noです。
インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスにしか効果を発揮しません。「かぜ」とはいわゆるかぜ症候群のことで、非常に多くの病原体によって引き起こされます。したがって、インフルエンザワクチンは他のかぜ症候群ウイルスには効果を認めません。

7.インフルエンザ予防接種は5年間有効である。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Noです。
インフルエンザワクチン接種後の免疫の持続期間はおよそ数カ月と考えられています。また、インフルエンザウイルスは毎年のように変異しながら流行するため、そのシーズンの流行を予測したワクチン株で製造されたインフルエンザワクチンを毎年接種する必要があります。ちなみに、5年間有効とされているのは肺炎球菌ワクチンです。

8.インフルエンザワクチンを接種すると肺炎に罹りにくくなる。これは、Yesでしょうか?Noでしょうか?
答えは、Yesです。
インフルエンザワクチンは高齢者の肺炎やインフルエンザによる入院を予防したという報告がいくつかあります。インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザの発病を防止し、インフルエンザに続発する肺炎を予防すると考えられています。私どもの「高齢者肺炎を対象とした症例対照研究」においても、インフルエンザワクチンによる肺炎予防効果が明らかにされています。

LinkIcon詳しくは、名古屋千種ロータリークラブまで