「米山記念奨学会中国学友会」を訪問して


 2010年9月17日午前11時50分、小雨煙る北京空港に私ども中部名古屋みらいRCの高鳴る期待を乗せた中国国際航空の機体が滑るように着陸しました。

中部名古屋みらいRCは、2009年5月13日に学友を中心として創立した全国で三番目のクラブです。私どもクラブのチャーターメンバーには、所謂既存クラブのメンバーが1人もおりません。クラブ創立後約1年半を経過しようとしておりますが、ロータリークラブの基本もまだまだ分からないひよっ子クラブです。

今年度の私の活動方針の根幹は、ロータリーの基本事項を理解し行動することです。7月と8月の2ケ月間は、会員の意には沿わなかったかもしれませんが、あえて基本的なことを申してきました。

そしてもうひとつ今年度は、私どもクラブとほぼ同時期に北京において米山奨学生(ロータリーでは我々と同じ“学友”と呼ばれる方々)が創立した「米山記念奨学会中国学友会(注1)」(以下「中国学友会」という。)を訪問し、私どもと同じ境遇の彼らが行っている社会奉仕の活動を見せてもらおうと考え、私は彼らを訪問することを今年度の重要な記念事業として計画し、クラブ内の有志を募り実施しました。本稿では、その計画段階から訪問記をご報告いたします。
 

私は2006-07年度国際ロータリー第2760地区のGSE派遣メンバーです。GSEでアメリカ合衆国のアーカンソー州に派遣していただきました。その時の当地区のガバナーが斎藤直美様(豊田RC)で、ご縁あって私どもクラブの特別代表です。また、斎藤様はかつて豊田RCがホストをされた米山奨学生の韓霏さん(天津医科大学副学長)のホストファミリーでいらっしゃり、斎藤様がGSEの応援にアーカンソー州に来て下さった時に、当時フィラデルフィアに留学中の韓霏さんがサポートして下さり、その時以来私とも親交をいただいておりました。その後、韓霏さんは母国中国に帰国され、中国学友会の創立メンバーとして活躍しておられ、今回私の企画に対し多大なご協力をいただきました。私が無謀とも思える企画を成功裏に終えることができましたのも、ひとえにロータリーで広がっていったネットワーク(幸運)に支えられたおかげです。

さて、私たちは2010年9月17日(金)~20日(月)に北京の中国学友会を訪問しました。設立間がないことと学友であるという共通点を持つ中国学友会の活動を見せてもらうことで、何か得られないだろうか、基礎固めという同じ時期に共通する悩みごとはないだろうか、どうやってロータリーに恩返しをしているのだろうか、メンバー間のコミュニケーションのとり方や限られた会費でどのように組織を運営しているだろうかなど、多くの課題を学ぶために、そしてまた私どもクラブ内の親睦を深めるために、韓霏さんと約半年間連絡を取り合って訪問計画を立てました。計画を進めている時に、韓霏さんから、「当日は偶然にも、中国学友会の1年間の事業の内の重要なイベントの日に当たり、皆さんを大歓迎します。」と連絡が入りました。後日、そのイベントは、「自分たちがお世話している孤児院の孤児たちと行う運動会で、皆さんにも参加して欲しい。」と言われました。
 

2010年9月18日(土)午前7時45分ホテルを出発し、北京市内とはいっても約2時間半かけ、学友の崔燕さんの別荘に行きました。イベントは、紆余曲折の結果、崔燕さんが保有する山へハイキングへ出かける予定だったようですが、残念なことに当日は雨天となり、別荘近くのレストランで、中国学友会のメンバ-並びに孤児たちと私ども全員参加で簡単なゲ-ムを楽しみ、その後懇親パ-ティ-を行いました。ゲームは中国の昔の遊び(日本にもあるよく似た遊び)で全員で行うジャンケンと10人11脚競争(但し横に動くので難しい)と隣の人の肩を叩いて数を速く数えるゲームでした。どれもとてもシンプルな遊びでしたが、大変盛り上がり全員が汗だくになるほどエキサイティングし楽しめました。

懇親パーティーでは、孤児たちが全員1人ずつ、日本語で自己紹介をしてくれたことに、大変感動しました。そして、中国学友会のメンバーと孤児たちの打ち解けあった表情に接して、なんとも幸せな気持ちになりました。

レストランのメニューは、名物の各種豆腐料理、鳩やロバ肉の料理が出ました。それらの食材にさすが中国を感じましたが、その味はどれも美味しく忘れられません。しかし、それ以上に、中国学友会のメンバー誰もが皆さん口々に、日本のロータリアンから受けた多大なご恩に感謝し、日本のロータリアンの優しい心を受け継ぎ、自分たちがどう恩返しできるかを常に考え続けていて、その結果、孤児院の孤児たちのお世話をしながら、彼らに日本語を教えていたことは、美味しい食事をはるかに超えた感銘を受けましたし、私たちの今後の奉仕活動に対し大きな示唆をいただきました。

 また彼らの活動を見て、充実した会務の運営ができるのは、やはり、一にも二にも個々のメンバーの自発性が大きく影響していると切に感じました。そして私どもクラブだけにかかわらず、既存の伝統あるクラブにおかれましても、やはり個々のメンバーの力を引き出すことが必要不可欠であり、クラブの規模は全く関係ないと、自分自身が思い描いているロータリークラブの姿について、大いに納得できました。

別れ際、「今回の訪問だけでなく今後も相互交流を行っていきたい。」(姫軍 華北支部会長)「上海支部へも是非訪問してほしい。」(楊弋涛 上海支部副会長)というありがたいお言葉もいただきました。

華北支部会長の姫軍さんが申されました。「中国学友会のメンバーが始めた孤児たちへの日本語指導ももう途中で投げ出せません。今後この事業をいかに継続していくかが大切だ」と。私にとって全て初めての試みであった中国学友会への訪問を自分一人で計画し準備していた最中、何度も挫折しそうになりましたが、自分自身を信じ自分自身を激励して諦めることなく継続し続けてきた姿とも重なりました。そして、終わってみれば計り知れない充実感や周りの方々から頂戴した感謝の言葉で満たされ、私にとりましてこの上ない財産となりました。つまり、どんなことでも継続がいかに大切であるか、私は姫軍さんの言葉に心から共感できました。

 私ども中部名古屋みらいRCが、学友出身者との交流を続けることにより、ロータリー活動の底辺の拡大と、かつて私たちが多くのロータリアンの方々からいただいた数々のご恩に報いることになれると思いますので、今後とも引き続き交流を深めていけることを節に願っております。

 

(注1)
「米山記念奨学会中国学友会」は、南北に2つの支部から構成されています。北京を中心に北部を「米山記念奨学会中国学友会華北支部」(会長姫軍さん)で、上海を中心に南部を「米山記念奨学会中国学友会上海支部」(会長張晋岩さん)です。会長は1年ごとに華北支部会長と上海支部会長が交替で就任し、2009年は華北支部会長姫軍さんで、2010年は上海支部会長張晋岩さんです。2011年は姫軍さんがまた会長になられます。